出版物の紹介
定価 | 1,000円(税別) |
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判型 | A5判 140ページ |
発刊 | 2021年06月 |
ISBN | 978-4-907717-65-0 |
10年前の東京電力福島第一原発事故で、私たちは家庭のエネルギーの大半を電力会社に依存していることに気付かされました。安全再点検でほとんどの原発がストップすると、代わりに急増したのは地球温暖化の原因となるCO₂を多く排出する石炭火力発電所でした。原料の石炭が安いからです。それはおかしと思っても、電気を使っている限りは、原発や石炭火力起源の電力を拒否できません。部屋の照明やテレビ、冷蔵庫などに使っている電力がどこで産み出されたかが分かる仕組みはなく、電気を使っている限りはコンセントの先は原発や石炭火力ともつながっているのです。
誰もこんなことで良いと思っていないはずです。環境を放射能で汚染したり温暖化を加速しないエネルギーの在り方を進めるには、これまでの政府や電力会社任せを考え直さなくてはなりません。日常の暮らしの中で省エネや創エネに取り組むだけでなく、そうした家庭同士が自主的に横つながりすることで大きな力になります。それを進めることで市民や地域社会が「エネルギー使いの主人公」になれるのです。
元環境省事務次官の著者は「隗(かい)より始め」で自宅をエコハウスに建て替えました。それから21年間、建物の断熱や太陽熱温水器、太陽光発電、節水などの省エネ、創エネに熱心にかつ無理せずに取り組んできました。CO₂削減にどれだけ効果があったのか、経済的な損得勘定はどうだったかなど成果と問題点を本書で全て明らかにしています。エコなお家にすると良いこと山盛りだったのです。
また、著者は国内外の環境にやさしいエネルギーの現場に実際に足を運んできました。米国ネイパービル市は全市スマートグリッド化を達成しました。世界に先駆けて脱炭素を宣言したハワイでは太陽光発電の比率が急速に高まり安定供給に知恵を絞っています。沖縄・宮古島では地域電力会社が各家庭や市営住宅に自社の費用で太陽光発電パネルを取り付け、そこで発電した電力を買い取ってもらっています。再生可能エネルギー開発に熱心な福島県では、太陽光発電や風力発電した電力を首都圏に送るために民間企業が送電線を自前で建設しました。
地方だけでありません。東京や大阪など大都市でも私たちができる取り組みを紹介しています。耳学問や二次情報はありません。あくまで筆者が現場を訪れ、自分が見聞きしたものを報告しています。生活者の立場からの手作り、手探りのエネルギー読本です。