つれづれ

『学校文化の源流を探る』著者に聞きました   きっかけは? 苦労したのは?

2024.11.4

『学校文化の源流を探る』(海象社刊)が11月3日(文化の日)に発行されました。多様で豊かな学校文化の起源を歴史と地域性から読み解いた労作です。著者の文化庁(京都)次長、森田正信さんに学校文化に関心をもったきっかけ、学校文化とは、そして執筆の苦労話をうかがいました。

鹿児島教委に赴任、「おやっ」がきっかけ

――学校文化に関心を持つようになったきっかけを教えてください。

森田さん 京都大学で教育学を専攻し、文部省(現・文部科学省)に入省して35年になります。学校文化の豊かな多様性に気づいたのは30歳の時、鹿児島県教育委員会に赴任した時です。鹿児島県内で見聞きした学校生活と徳島県で育った自分が経験した学校生活との間にいろいろな、そして興味深い違いがあることを知ったことでした。それが地域の伝統に根ざしていることを知って地域や教育の歴史に興味を持ちました。

例えば、子どもたちが当番で本を読み有線放送などで地域に流す「朝読み夕読み」、(遠足ではない)遠行、錦江湾横断遠泳など初めて聞く活動がありました。「のんかた」(鹿児島弁で飲み会のこと。芋焼酎のお湯割り以外のお酒はまず出てこない)で、地域や保護者にとって運動会の出来栄えが最も重要と見ていることをお聞きし、「おやっ、そうなんだ」と思うことがしばしばでした。

 逆に、高校の体育祭で阿波踊りを踊ったり、人形浄瑠璃を鑑賞したりした徳島での学校生活も、他県の人には「おやっ」と思われるのだろうと自分の体験を相対化できるようになりました。

――学校文化ってどんなものなのでしょうか?

 森田さん それぞれの学校には何か特有の行動や決まりの型がある気がします。それは校風に代表される学校の伝統から生み出される雰囲気、行事や規則、言葉遣いや行動様式、生徒の制服やスタイル……などです。人間に生活習慣があるように、学校にもあるそのようなものが学校文化だと思っています。学校文化を共有することがその地域の人たちのつながりを生み出していくのではないでしょうか。

調べれば調べるほど奥が深い

――「おやっ」で終わらずに、探求を続けられたのですね。

森田さん ドイツや京都にも赴任しましたが、学校文化への個人的興味を掘り下げることが趣味のようになりました。飲み会(重要な情報収集の場です)でご一緒した方に出身地を聞いては質問して取材、さらに関係する文献、新聞記事、テレビ番組などの情報を可能な限り集めました。平日は仕事で時間がないため、執筆は週末を中心に数年かけました。

 学校文化の歴史と地域性は調べれば調べるほど奥が深く、「そうだったのか」と新たな気づきや発見が次々と出てきて、ゲラになった後も修正を重ねました。まだ不十分な点はあるでしょうが、この本を読んでいただいて学校文化の奥深さ、現在の学校教育に与えている影響、今後のあり方について考えていただけたら幸いです。

◆『学校文化の源流を探る』(ISBN978-4-907717-14-8)は四六判、340ページ、定価1800円(税別)です。