つれづれ

どうして「倫理」の本を ー川原先生に聞きました

2024.8.26

様々な偉人の考え方を紹介する『どう生きるか-18歳からの倫理』が発行されました。「倫理」と言うと、なんか古めかしいような、でも新鮮な感じも同時に受けます。今、どうして倫理の本を書いたのか、著者の川原茂雄先生(札幌学院大学人間学科教授)に聞きました。

――「倫理」って何を学ぶ科目ですか? 英語や数学、歴史なんかと違って、学ばなくても将来困らない科目じゃないんですか?

 川原先生 倫理とは、自分がどう生きるかという、生き方の理(ことわり)を考えることです。それには正解はありません。その人の人生にとって、どう生きるかは一番大事なことで、自分の人生に責任を持つのは自分しかいません。自分の人生をどう生きるかは、誰もが考えなければならないこと、そうした意味で倫理は「必修科目」なのです。

 ――「倫理」って聞くと、堅苦しさや古めかしさが連想されてしまうのですが…。

 川原先生 宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」は知っていますよね。昨年7月に公開されましたが、年をまたいだロングラン上映され、アカデミー賞(長編アニメ―ション映画賞)も受賞しました。このタイトルは昭和13(1937)年刊行の吉野源三郎の小説「君たちはどう生きるか」からとられています。また、「ここは今から倫理です。」って漫画作品(雨瀬シオリ作)は知っていますか? 主人公は高校の倫理の先生で、2021年にはNHKでテレビドラマ化されるなど話題になりました。“どう生きるか”という問いと、それを考える「倫理」は、いつの時代も新鮮だし、みんなとても関心があることだと私は思っています。

――先生は以前は高校にお勤めでしたが、「倫理」を教えたことはあるのですか?

 川原先生 私自身、高校生の時に「倫理」という科目に出会ったことで、哲学者になりたいと思いました。大学の哲学科を卒業して北海道の高校の社会科教師になり、35年間教える中で「倫理」を担当することもできました。

――本はどんな内容ですか?

川原先生 どう生きるかを考えるには、そのための「考える力」をつけるトレーニングが必要です。ソクラテス、アリストテレス、カント、サルトル、ルソー、快楽主義や禁欲主義……古今の哲学者や思想家の言葉や考え方を紹介していますが、それはみなさんの「考える力」をつけてもらうためです。彼らの思想を学ぶのは、みなさんが「考える力」をつけるトレーニングのためのダンベルとかランニングマシンのようなものなのです。

――どんな人に読んでほしいですか?

 川原先生 これから18歳になって自分の進路や生き方を真剣に考える学生たちに是非とも読んで欲しいと思っています。もちろん18歳になる前の高校生たちや、18歳をとうに過ぎたおとなの人たちにとっても、自分の生き方を考える参考になるはずです。

【どう生きるかー18歳からの倫理】 A5判・並製/144ページ、定価1500円(税別)、8月26日発行、ISBN978-4-907717-47-6

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【川原氏略歴】1957年北海道長沼町生まれ、日本大学哲学科を出て道内の社会科教師に。2016年に35年間勤めた高校教教師を退職、札幌学院大学人文学部人間学科教授(教育学)。その傍ら、市民を対象にした「出前授業」を続けている。主な著書に『原発と教育―原発と放射能をどう教えるのか』(海象社・2014年)、『ブラック生徒指導~理不尽から当たり前の指導へ』(海象社・2020年)、『子どもの権利条約と生徒指導』(明石書店・2023年)など。