つれづれ

自民党総裁選・立憲民主党代表選 候補者の訴えは多彩だが 「渋沢イズム」学んで、骨太の改革構想を

2024.9.11

9月は自民党総裁選、立憲民主党の代表選が相次ぎ実施される。低迷・閉塞している日本の現状を打開しようと、自民総裁選では最多の候補者が名乗りを上げ、立憲民主代表選は4氏が立候補を届け出た。これらの候補者が語る政策や提案には新鮮な面もある一方で、その多くは足元の制約や古い慣行の打破に絞られ、21世紀日本がどのような目標を掲げ、その達成に立ふさがる制約をどう克服していくべきかといった、大きく構えた骨太の構想が語られていないのは残念だ。

7月3日に「新1万円札の顔」として渋沢栄一が登場した。明治維新後の日本の近代化に一実業人として多大の貢献をし、「日本資本主義の父」と呼ばれる。実は渋沢の経済人としての世界観や経営哲学、経営手法(渋沢イズム)に新しい時代の光と風を当てることで、21世紀日本が目指すべき目標、姿を描くことが可能だ、と思う。ところが、渋沢に対する扱いは、多くの企業を設立したことや、貧富の格差是のための救済施設や病院設立など過去の業績の評価に留まっている。書店の渋沢コーナーでも過去の業績を扱った書籍が大半を占め、「渋沢イズム」がこれからの日本の針路に大きな影響を与える、といった視点の書籍はほとんど見当たらない。渋沢が新1万円札に登場したこの機会に、「過去の偉大な人物」扱いを脱して、これからの日本を構築するための渋沢イズムを再評価すべきだと思う。

温暖化が原因の異常気象が世界中を暴れまわっている。生態系が壊され、資源が枯渇し、食糧不足も深刻化している地球。世界の人々が今のアメリカ人のような生活を目指せば、地球が5個は必要になる、との試算もある。だが地球は一つしかない。一つの地球の上で、生活していくためには、「地球は無限」を前提にしているアメリカ型の「行け行けどんどん」型の経済拡大主義は早晩行き詰まってしまうだろう。

経済と道徳の両立、利己主義ではなく利他主義、士魂商才、世の中が必要とする物品・サービスを提供する組織としての株式会社、企業税悪説ではなく企業性善説などは渋沢哲学、渋沢イズムのキーワードである。渋沢が今生きていれば、これらの語録を総合的に組み合わせ、低迷・閉塞感に苦しむ現状打破に大ナタを振るうだろう。

自民党総裁選、立憲民主党代表選候補の皆さんたちへ。偉大な先達である渋沢の哲学やイズムを研究し、自分が渋沢になったつもりで、日本改革の大構想を打ち上げ、互いに切磋琢磨してほしい。

(経済・環境ジャーナリスト、三橋規宏=『渋沢イズムでニッポン元気復活!』著者)