つれづれ
64歳で生まれるって?
「私はカーリ、64歳で生まれた Nowhere’s child」が9月下旬に本屋さんに並びます(アマゾンでは22日から)。著者のカーリ・ロースヴァルさんの実話ですが、「64歳で生まれる」ってどういうことでしょうか? 物語が展開するにつれ、おぞましい“歴史の闇”が明らかにされます。
スウェーデンで養父母に育てられたカーリさんは、そこで生まれたと思っていました。就職した際にノルウェー生まれだと知らされ、「養女になるまでの自分」探しを始めます。産みの母がオスロにいると知って、会いに行きますが冷たくあしらわれてしまいます。その後、幾多の試練を乗り越えた64歳になって初めて、赤ちゃんだった時の写真を目にします。さらに、自分がナチスのアーリア人増殖作戦で生まれた“ヒットラーの子ども”だったことも知ります。
アーリア人増殖作戦は、ユダヤ人を迫害・殺りくしたホロコーストのようには知られていません。それはヒットラーと親衛隊(SS)のヒムラー長官が主導したものです。「レーべンスボルン(命の泉)」と呼ばれる施設で、SS隊員と身体的検査をパスした女性を“掛け合わせ”て生まれた子どもを育てるのです。この施設はドイツ国内だけでなく占領地ノルウェーにも作られました。カーリさんはそこで生まれ、ドイツの敗戦によってスウェーデンの孤児院に送られたのでした。そして……。
この本は、ナチスのアーリア人増殖計画告発が主目的の本ではありません。もちろん、それは絶対に許されないことですが、カーリさんが真実にたどり着くまでの波乱に満ちた道筋と、どんな時も愛することを失わない生き方に触れてほしいのです。
カーリさんは、日本の読者に次のメッセージを送ってくれています。
この本は戦争の恐怖とその後、何が起きたかについて綴られています。
憎しみや深い愛情、希望についての物語です。
この本を読んで二度と戦争を繰り返してはならないと感じ取ってください。